Musashi Kosugi Bus Depot
Musashi Kosugi Bus Depot

     武蔵小杉駅のバスターミナルに出た。歩道の屋根の下に付いている行き先案内には市民ミュージアムという字が見当たらない。最初に目についたバスの案内表示を見る。行き先が違う。隣の時刻表を見る。ここだ。ところが、あと20分ほど待たないと、市民ミュージアムへ行く次のバスは来ない。数人がベンチに座って待っている。バスターミナルの向こうにタクシー乗り場が見えた。青地に白で「南武沿線道路」と書いた表示が見える。いつものようにゲストが先に乗り込む。後ろ向きの運転手に行先を告げる。大通りを右折すると、府中街道だ。しばらく進むと、とどろきアリーナの屋根が森の中に見える。目的地は近い。「とどろきグランド入り口」と書いてある交差点を右に入ると、等々力緑地だ。道路の左側に山門を見つけたらしい。「神社か」と聞かれたので、「鳥居はあったか」と聞いた。「タクシーが速く走っていたので鳥居があるかどうかはわからない」という返事。普段、車で通っているときに神社を見かけたことはないので、寺院ということにした。後で調べたら高元寺だった。市民ミュージアムを訪れることになったのは、昨日の市役所で係りの2人と話し合ったときに、卒論の内容を再検討するので、参考に訪れておきたいのだそうだ。岡本太郎美術館から、登戸に向かう途中で急に決まったようだ。

Kawasaki City Museum Sign
Kawasaki City Museum Sign

           入り口の少し手前でタクシーを降りて、美術館の建物の外観を見る。入り口に書いてあるゲストの頭の位置よりも高い所に「KAWASAKI CITY MUSEUM」と書いてある銀色の文字の下でゲストを撮影してから中に入った。受付で日本語と英語のパンフレットを1冊ずつもらって、右方向に進む。階段の左側をのぼり、外を見ると、福田繁雄の「200120022003」という黄色と青紫色のオブジェの向こうに、ガラス越しにJFEスティールがまだ日本鋼管(にっぽんこうかん)と言われていた1937年から使用していた製鋼炉が見える。トーマス転炉(Thomas Smelting Furnace)という。この模型が中にも展示されている。

A Shishi Lion's Mask bites him
A Shishi Lion's Mask bites him

     ホールの中央からみて右方向にある「第46回かわさき市美術展」の作品展示会場の受付に向かった。撮影ができると聞き、首から許可証を提げて中に入った。ゲストは、美術館の順路は進みやすいように工夫されていると言う。花火の色彩がきれいな「川崎の花火」の写真の前でゲストを撮った。「あ、食べられちゃった」という作品を見てすぐ、2人とも同じことを考えた。子供が獅子の口に手を入れている姿は、今朝、チネチッタで見た「ローマの休日」に出てくる「真実の口」にそっくりだ。このコーナーに隣接するのはアートギャラリー(Gallery for Arts)だ。ここでは「資〇堂」のポスターの歴史を見ることができた。「粉白練堂生資」、失礼、右から読みます。山田美波里や山口小夜子を起用した中村誠の作品を見ることができた。倍賞美津子、今井美樹、蛯原友里さんらのポスターの手前で、ゲストが方向転換して、博物館展示室に進む。川崎の縄文時代からWWII以降までの歴史を見ることができた。実寸の発掘現場の模型があった。「Digging Sites」と言っているのが、聞き取れず、発掘現場の周りを半周しながら3回ほど聞いたがまだ分からず、最後には綴りを言ってもらった。「Diggin-sai」にしか聞こえない。納得したときには、二ケ領用水の取水場の模型を展示するコーナーにいた。「久地円筒形分水」と言う。「サイフォンの原理」で水を沸きあげて、円筒形の溝に灌漑用水を流す仕組みだ。その隣に、鶴見川の下流が東海道線と交差して、カーブしている辺りにレンガ工場があったことを示す写真と地図があった。今は「M製菓」の工場になっている。その横に、どんど焼きに使う全体が藁葺きの小屋が建っている・て、モンゴルのゲルの様な形をしている。その中に大きな酒樽が2つあった。印刷されたラベルから周りに張ってあった。ラベルを見ながら、ゲストはお酒だと言った。再び入り口にもどった。インフォメーション・デスクで提げていた撮影許可証を返して、タクシーを降りて入ってきた入り口とは反対側にある扉から外に出た。「鉄人28号」の胴体のようなモニュメントが見える。

Thomas Smelting Furnace
Thomas Smelting Furnace

          内部に展示してあったレプリカと違ってトーマス転炉の大きいこと。ミュージアムの建物全体を眺め、再び中に入ると、右奥にレストランがあった。「きょう1回目のコーヒー休憩をしよう」と言うゲストの後に続いて、無人のレジカウンターの前を進む。しばらく待ったが、案内係りも現れない。左にカーブを描く店内を進むと、ゆったり座れる長椅子のあるテーブルがあった。目の前に武蔵小杉の高層ビル群が見渡せる席だ。向かいの席にスパゲッティーを運んできた女性にレギュラーコーヒーを注文する。先にコーヒーを飲みほした私がトイレに立った。だいぶ話し込んだあと、ゲストがトイレに行く。戻ってから、便座の話になった。ゲストハウスの便座は、ひんやりしていたことを思い出して話したら、別に気にならないとのこと。日本の温かい便座は画期的だとか、オーストラリア出身の両親もあまり便座に関心がないが、多くのアメリカ人の方がもっと、トイレに頓着しないことを熱く語ってくれた。浴室とトイレが同じ室内にある場合、漏電がこわい。昨夜、ネットで調べておいた川崎出身のアーティストがあまり見つからなかったことや、Wikipediaを日本語と英語の両方の表示で調べたら、英語では、載っている情報量が少なく、日本のことは日本語で調べた方が、役立つはずだと伝えた。川崎にある企業名や学校名は、英語に表示すると出てこなかった。「Dコンピュータ」や「トイxxス」の本社があることを知って驚いていた。

"2001・2002・2003..." 福田繁雄 (from Website)
"2001・2002・2003..." 福田繁雄 (from Website)

     向かいでスパゲッティーを食べ終えた人の席の後ろでは2人の男性が食事をしていた。向こう側の人が、岡本太郎美術館はいま、妹さんが経営していると話していた。美術館で小声で話す機会が多かったせいか、よく聞きとれるような気がした。岡本太郎美術館から登戸駅に向かって歩いているとき、寿司が好きだと聞いたので、話の続きに回転ずしのことを聞いたら、笑いながら、よく行くのだそうだ。このまま、食べ物の話が盛り上がって、夕食は寿司にすることが決まり、早速、妻にメールした。市民ミュージアムを出るころに連絡するように、30分ほど前に連絡があった。ステーキの予定だったのが一変したので妻は「想定外」と書いてよこした。先ほどからずっと、大勢の学生がサッカーの練習をしているのを見ていたゲストは、ふとその後方にある高層のビル群を見て、何なのか聞いてきた。川崎市内のいくつかある中心市街地の1つだと答えた。会計を済ませるとき、レジの女性にアメリカの人が店でバナナを食べてしまったことを詫びたが、気づかなかったという返事だった。

          川崎市民ミュージアムは198811月に博物館と美術館を兼ねた複合総合施設で等々力(とどろき)緑地の中にある。陸上競技場、硬式野球場、テニスコート、サッカー場、プール、とどろきアリーナなどの運動施設があり、陸上競技場はサッカーJリーグ川崎フロンターレのホームグラウンドとなっている。帰りのバスの時刻を受付で聞いた。時刻表を見ながら「いま、ちょうど出ます。あの青い色のバスです」と、市営バスを指さしたので、出口を飛び出してバスに駆け寄った。ゲストの方が前を走っていたが、植え込みが邪魔をして遠回りしている。追い越した私が先にバスに飛び乗った。最後部の右側に座ったらすぐ、出発した。妻から川崎駅から京浜東北線で横浜に向かうというメールが入った。左側に竹林が見える所で、ゲストがカメラを取り出したので、竹を写すのかと思ってカメラの邪魔にならないように体をよけようとしていたら、飼っているLilyという名の犬を見せようとして、スマホを近づけたのだ。飼い主が誰なのかは聞き逃した。バスが停留所で止まった。府中街道の様子をバスの高い位置からそばにあったペットケアの店を眺めていたゲストが、どんなことをするのか聞くので、メールで事の次第を妻に連絡するのを打っている途中だったが、動物病院との違いを説明した。妻には、これから桜木町に向かうことを伝えた。すぐ妻から、すでに桜木町に着いていると連絡が入った。ウィンドウ・ショッピングをして待っていてほしいと伝えた。

JR Yokohama Station Track 3
JR Yokohama Station Track 3

          武蔵小杉でバスを降り、急いで改札に入って気がついた。JRの改札口を通ってしまった。スイカの記録をキャンセルしてもらって、東横線の方に向かう。せっかく2人とも座ることができたのに、飛び乗った電車は次の日吉止まりだ。降りて次の急行を待つ。駅員にJR桜木町へ行くには横浜で乗り換えるのかと聞いた。ホームにいた駅員は、車内でアナウンスする車掌のような独特の口調で「そうだ♬」と答えてくれた。JR線も東横線も、どちらも桜木町駅は隣接していると言う情報は得られなかった。私はJRの、妻は東横線の桜木町駅をいま頭に浮かべている。乗り換えた急行は混雑している。窓から夕日が差し込んでくる。立ったままで、乗降扉の上のモニターを見ていたら、各駅の到着時刻が示されていた。横浜に着く前に、ゲストは日本語で妻に挨拶したいと言う。私は英語でする方が楽でいいと言った。子供がおもちゃをせがむような言い方で「...PLEASE!」と、どうしても日本語で言いたいとせがまれたので、どんなセリフがいいかしばらく考えた。言葉の数が少ない「初めまして」に決めた。56回、繰り返しアクセントの位置を変えながら練習すると、日本語らしくなった。