Red Buoyant in Baltimore MD  (www.maryannmears.com)
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            『 ミッション・ポッシブル 』 

        いきなり英語がやってきた

 

≪まえがき≫

このホームページの背景の1つになっている「レッド・ブイアント」という褐色のモニュメントにまつわるお話です。この作品は、アメリカ、メリーランド州ボルチモア在住のアーティストMary Ann Mearsさんが制作し、ボルチモアのインナーハーバーという港の近くに設置された「レッド・ブイアント」といいます。同じものが日本とアメリカにあります。「レッド・ブイアント」が、2つある理由はのちほど詳しくお話しすることにして、まずタイトルの「ミッション・ポッシブル」の説明からはじめます。主人公はトム・クルーズではありません。「インポッシブル」ではないことは、すぐにわかります。賑やかなアクションシーンは、絶対に期待しないでください。 

 

 Beacon Bethesda (www.maryannmears.com)
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     登場する「ミッション」は4つ。1つは、ゲストとしてわが家を訪れたアメリカ人女性の「ミッション」です。まだ来年になってみないことには、この方の「ミッション」が終了するかどうかまったく予想がつきません。2つめは、私の「ミッション」です。副題の「-いきなり英語がやってきた-」からは、上司が急に社内では「きょうから英語で」とか「来週からロンドンへ行ってもらう」となるのですが、この「ミッション」は、そんなにすごいものではありません。-忘れかけた受験英語 vs. American English-のほうがよいかもしれません。英語スクールなどでは数か月かけて「空港で・駅で・レストランで・電車で・バスで」といった、さまざまな場面について、運転免許の講習のように、受講者が少しずつ内容を理解しながら慣れていくように、時間をかけて丁寧な学習をするでしょう。私のこの「ミッション」は、思っていた以上に高度なカリキュラムの中で、任務を遂行していくものでした。自分の言いたいことが頭に浮かんだら、思いつく表現をとにかく言葉にして、しかも会話が途切れないように早めに相手に伝えるのなら、まだマシです。この「ミッション」の基本になっていたのは、ひと言で言うと、「きょうの自分は何を言い出すのやら」です。口から出る言葉は、脳の中でつくられてくるはずですが、いつもの私自身とミッション遂行中の私の脳は、まるで別々に機能しているような気がしました。どこから入ってきたのか、頭の中に「英語の領域」が、できたようでした。教室で学んだことを実際に街中で練習。そんなものはありません。自動車教習所のコースでは、ある程度、校内のコースで運転に慣れてから路上で練習するのが、正しい順序でしょう。このミッションは、教室での学科の勉強をおこなう代わりに、いきなり路上に出て本番となった。アクセルを踏み損ねて、他人に迷惑をかけることがないのが救いだった。忘れかけていた受験英語を駆使して、多種多様の質疑応答を繰り返す。できるだけ意思の疎通が図れるように、その日その日を何とか無事に過ごすことでした。駅の改札口で出迎えていて、右手が差し出された瞬間から、実地訓練が始まりました。静かな教室の中での訓練だけではありません。満員電車の中で、賑やかな雑踏の中で、アナウンスが大きくて、聞こえにくい所などで。逆に静まり返った美術館や、まわりがくつろいでいるコーヒーショップの中では、小声で話します。リスニングにもさまざまなコースがありました。次第に、想定外の場面に出くわすのが楽しみになっていくほどでした。それでは、4日間の素晴らしい「ミッション」のはじまりです。 あと2つの「ミッション」も見逃さないでください。                                                     つづく